うつ病になった人間が刀ミュ蜂須賀虎徹に出会って救われている話

 

 

 

「美しい」と思った。

 

 

 

 

 

それがミュージカル『刀剣乱舞』の蜂須賀虎徹を初めて見た時の感想。

 

 

 

ミュージカル『刀剣乱舞』を初めて見た時、私は自分の体も心を満足に動かせずベッドに横たわる日々だった。

 

 

 

 

少しだけ昔話。昔、なんて言えるほどまだまだ過去の話ではないけど。

 

 

 

 

 

 

 

新卒で入った会社では営業をしていた。

 

慣れない業務のなかで、小さなやりがいや成長を拾い集めて奔走する日々。

上司からのパワハラ、オキャクサマからの理不尽な物言いに頭を下げ続ける日々、慢性的な人手不足による物理的な忙しさ…。いつの間にか、毎朝吐かないと出勤できなくなっていた。

 

社会人なんだから、頑張らなきゃ!まだまだ入ったばかりだから頑張らなきゃ!と自分を励まして出勤する毎日。実際に少しずつ自分の成長を感じたり、お客様に感謝の言葉を掛けられたりとやりがいに似た何かを感じられていた。どうしても辛い時はお風呂で静かに涙を流すのが日課になっていた。

 

 

 

 

そうしているうちに1年、2年と時は過ぎ、気が付いたら毎日のトップニュースは新型ウイルスだらけの日常に様変わりしていた。物理的にも精神的にも仕事が忙しくなったな、と感じていた。

 

 

 

 

朝、ベッドから立ち上がれなくなったのは、肌寒くなってきた頃。

 

 

 

病院であらゆる検査をして、もらった診断書に書かれていたのは、「うつ」だから「一定期間の休養を要する」。

 

 

ここら辺の事情はとても複雑なので割愛するが、休職できず自己都合による退職という運びになった。ここにきての無職である。

 

 

何も考えられず、退職届を書いて、1人暮らしのアパートの引き払って、実家に戻って。家族や友人にたくさん迷惑をかけたな、申し訳ないな、と思っても体は動かない。そんな自分が嫌だった。希死念慮がひどかった。

 

 

実家に戻っても固形物は体が受け付けず、理由もなくだらだらと涙だけ流し、毎日ベッドに横たわって天井を見つめ、時間が過ぎるのを待つ日々だった。

 

 

今まで好きだった読書や3次元の推しなどの趣味に全く手を伸ばせなくなっていた。あの頃過ごした時間は私の人生で3本の指に入るくらい辛かった。

 

 

カレンダーを何度かめくった頃、「これじゃいけない」と思った。思ったけど何をする気になれない。動きたくない、動けない。でもこれじゃいけない。

 

まずベッドの上でできることから始めよう。そう思って、動画配信サービスでドラマや映画を、YouTubeで動画を見ることにした。なるべく感情移入せず流し見できるもの。負の感情に引っ張られないようなものを選んで眺めていた。

 

 

 

 

そのうちの1つで見たタレントさんを、どこかで見たような気がして、すごく気になってしまった。

 

 

テレビに出ていたのを見たのだろうか。はたまた推しを見に行った舞台に出ていた?

調べてみると地元の先輩だった。なるほど、道理で。

 

 

そこから自然とそのタレントさんが出演していたものを選んで見るようになった。同郷の人が頑張っていると勝手に励まされる。ありがとうございます。

 

その日は突然訪れる。何気なくそのタレントさんが出演していたある作品をその日も見ていた。

直後、共演していた俳優さんを見た瞬間、体に雷が落ちた。

 

 

 

 

 

私の目に飛び込んできたのは、高橋健介さんだった。

 

 

 

 

初めて高橋さんを見て、衝動的に「もっと知りたい」と思った。こんなに何かをしたいと思ったのは久しぶりで嬉しかった。

 

 

 

調べていくうちに自然とたどりつくもの。ミュージカル『刀剣乱舞』。

 

 

 

刀剣乱舞』って聞いたことある。紅白で見た。そんな水溜まりよりも浅い知識しかない。

 

ゲーム原作。刀の付喪神。ミュージカル、舞台、アニメをはじめとする様々なメディアへ展開されている…。少しずつ知るたびにどんどん「楽しい」という感情が心に火を灯し始める。

 

 

 

 

 

そしてその火が灯り始めたのは、2021年の1月である。

 

 

 

そう、ミュージカル『刀剣乱舞』五周年記念 壽 乱舞音曲祭の公演真っ只中であった。

 

 

音曲祭が全公演配信されていることは調べたらすぐ分かった。見てみたい、という気持ちと、水溜まりよりも浅い…それも小雨があがった後の水溜まりより浅い知識しかない自分が見てもいいものだろうか、という気持ちがせめぎ合い、本気で丸1日悩んだ。

 

 

見るか見まいかを考えるほど、高橋さんに、刀ミュに出会ってから不安や自己否定以外に思考力を使えるまでに、少しずつではあるが元気になっていた。ご飯も喉を通るようになった。ベッドから起き上がれる日が増えていた。

 

 

見ないで後悔より見て後悔だ、と思って買った配信チケット。何回も地面に落としているのに、液晶には傷がついていないスマホの小さな画面で見た。

 

 

こういうご時世だから配信を快適に見るための機械は揃っている。しかしセットをする元気まではどうにも出ない。興味で見てみるだけだから、という言い訳を誰に聞かれたわけでもないのに心の中で何度も呟いて開演を待つ。スマホを持つ手はじんわり汗をかき始めていた。

 

 

 

 

 

約3時間後。私はスマホを投げ出し、ベッドに横たわりながら天井を眺めていた。

 

 

 

 

 

時間が過ぎるのを待っていたあの頃とは全く違う感情。楽しさや興奮、ときめきをごちゃごちゃに混ぜた夢心地の気分。天井ってこんな柄だったんだ、と高揚感に包まれながら思った。無理してでも大きな画面で見る努力をしたら良かった。

 

 

「楽しかった」。これが一番わかりやすい私の感想。次々と披露されるパフォーマンスに瞬きすら惜しいと思った。2幕の燕尾服に心を射抜かれた。そのあとの記憶が定かではない。

 

 

そして一番、私の心を跳ねさせたのはやっぱり蜂須賀虎徹だった。

 

 

 

ターンするたびにふわりと広がる髪も、しゃんとした立ち姿も、表情管理も、目線の配り方も、ウインクも全てが美しかった。天界から舞い降りたんか?*1

 

 

完全に私の好みだが、ダンスや歌のスキルもさることながら心惹かれるのは「+αの表現力」なのだ…。無理なのだ…。カメラアピールがうまいのが無理なのだ…。指先まで丁寧に心を込めて踊るのが無理なのだ…。視線に意味を持たせるのが無理なのだ…。小道具を使いこなすのが無理なのだ…。考え抜かれた所作が無理なのだ…。語尾がハム太郎になってしまうくらい、ミュ蜂須賀がドストライクなのだ…。ウインクからの舌ペロで心臓が焼けたのだ…。

 

 

 

 

もちろん出演しているキャラクター全てが魅力的だった。浅はかな知識しかないけど、燕尾服がキャラクターによって微妙に違っていたのに気が付いた時は天を仰いだ。

何より曲がいい。特に『誰のモノでもない人生』とパライソの刀達が歌っていた曲(曲名調べたんですけど分からなかったです…フリースタイル?)がいい曲かつ思うところがあってディレイ配信で何度も見た。

 

 

 

 

 

初めてしっかり認識した上で、刀ミュの蜂須賀虎徹を見て心が蜂須賀虎徹でいっぱいになった。もっともっと知りたい、見たい、と思った。見るもの全てが真新しくてときめきで圧死される時期、楽しい。

 

 

 

そのあと、私は刀剣乱舞-ONLINE-Pocketを始めた。人生でほとんどゲームをしてこなかったのにである。正しくはしてこなかった、ではなく続かなかった。推しがCMに起用されたアプリゲームですら1週間も続かなかった。

 

 

それでももっと知りたいと思った。どうせ続かないことは目に見えている。でももっと知りたいのだ。知るなら原作。知るなら公式。

 

 

しかし今のところ毎日ゲームにログインしている。これも全てはログインすると、蜂須賀が出迎えてくれるからである。ありがとう、蜂須賀…。軽装似合ってるよ……。次に修行道具揃ったら修行に行っておいで…。

 

 

 

そして次に私はTwitterのアカウントを作った。私だけでときめきを抱えきれなかった。誰かに話したいわけでもないが、どこかにこの気持ちをアウトプットしたい。

 

この頃はだいぶ体調が落ち着いてきて穏やかに過ごせる日が増えていた。これは刀剣乱舞セラピーなのか???筋トレも始めたのもこの頃。*2

 

 

 

もっとミュ蜂須賀を見たい…。でも何を見ればいいか分からない…。新ジャンル開拓時に必ず陥る現象である。

 

 

Twitterで日々抱えきれない思いを綴っていたら優しい方が色々教えてくださった。Twitterすごい。優しい世界。ありがとうございます。

 

 

手始めに歌合のBlu-rayを買ってみることにした。幸いにもいくらか退職金をもらっていたので、「使ってやらぁ!」という気持ちでポチった。良い子のみんなは納税分はちゃんと寄せておきましょうね。

 

 

楽しかった、本当に楽しかった。この楽しさを形容するに相応しい語彙を持っていないことが悔やまれる。

 

 

『Stay with me』の蜂須賀を見て「ん゛ッ!」となった。勘弁してほしい。心臓がいくつあっても足りない。私はミュ蜂須賀を見て何度心臓が焼け焦げるのだろう。

 

 

ここまできたら完全にミュ蜂須賀の虜である。しんどい。嘘、楽しい。心が潤う。

 

 

 

2021年2月1日。『幕末天狼傅2020』のアーカイブ配信チケットを買った。

 

ここ数ヶ月、刀ミュに限らず、なるべく感情移入しないような作品を選んで見ていたから、しっかりとしたストーリーがあるものを見たら感情が追いつかないかもしれない…。そんな不安もあった。

 

 

それでも私は見たかった。今度はちゃんと大きな画面で見た。

 

 

1幕、元の主が狙われていることを知った新撰組刀、葛藤する清光と安定、蜂須賀と長曽祢さん、繋ごうとする和泉守と堀川、それぞれの想いが丁寧に表現されていて物語にのめり込んでいった。ほとんど涙目での鑑賞である。

 

 

1幕最後の蜂須賀と長曽祢さんのシーンで涙が流れた。まだまだ新参者だけど、あの場面であれを出来たのは蜂須賀しかいなかったよな…、とか思いながら。理由があって流す涙は温かいな、と思った。

 

 

 

2幕では心臓のキャンプファイヤーである。高低差激しくて耳キーンする。まずScarlet Lipsで死ぬ。音曲祭でも天に召されていたのだから当たり前のことである。今度から国語辞典の【格好いい】の項目は【Scarlet Lipsのこと】って書いてください。

 

 

煌びやかなショーに圧倒され、概念として呼吸をすることを忘れる。酸素がないと火が燃えない、と小学生の頃習ったような気がするのに、心臓は燃え続ける。助けてくれ。ときめきで心臓が熱い。凝視したいのに恥ずかしくて直視できない。こんなにも見たいのに!!!

 

 

 

 

dアニメストアで刀ミュ過去作を見ることができる」という情報も教えていただいていた。ありがてえ…。どこまでも新規に優しい…。天狼傅2020を見終わって早速入会手続きをした。

 

この長い長い下り坂をミュ蜂須賀を自転車の後ろに乗せて(概念)ブレーキ一切握りしめず激早いスピードで下っていく…*3。あの名曲を恐ろしい替え歌にすり替えて歌ってしまうくらい、楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。今はというと、刀ミュ過去作を見て「これほどの最高コンテンツを私はよく今まで知らずに生きていたな…」と思いながら過ごしている。ゲームの方は頑張って大阪城を回ってる。

 

 

 

まだ思考がねじ曲がって心がぐちゃぐちゃになってしまう日もある。体調が悪い日もある。何もできなくて気が付いたら夜になっている日もある。でも、少しずつそんな日も少なくなってきた。手探りで私なりの向き合い方や付き合い方が見えてきたような気もする。

 

 

担当医に「何か楽しいと思えることをして過ごせたらいいんだけど…」と言われて、「楽しいと思えることなんて1つもない…。働いてもないのに楽しいことをしていいはずがない…」と刀ミュに出会うまでは、そんな歪んだ思考に囚われていた。

 

 

でも今は、楽しいと思えることがある。心が躍るものがある。それが嬉しい。

 

 

 

まだ「一定期間の休養中」の肩書は取れない。将来のことを考えると不安にもなる。でもそれは仕方のないこと。人生長いんだし、ちょっとのお暇も必要だよね、と思えるようになってきた。体調がいい日は「次はどんな仕事をしようかな」と思えるときもある。慌てず、しっかり自分と向き合っていきたい。

 

 

 

 

ミュージカル『刀剣乱舞』に出会って、刀ミュ蜂須賀虎徹に出会って、私は救われました。現在進行形で救われています。ありがとう…。

重いかな…、って思ったけど結局私が言いたかったことの本質は「刀ミュめっちゃ楽しい~~~~~~~~~~~!!!」ということなので重いも軽いもないかな…と自己完結しています。新参者が好き勝手言ってすみません。これからもっと勉強したいな、と思います。

 

 

 

 

ひとまず私は『Scarlet Lips』の告知映像を見て、また心臓を焼かれました。*4。team新撰組with蜂須賀虎徹は怖い。私があと5歳若かったら危なかった、色んな意味で。

 

 

 

見るたび心臓がギュンとなる。あなたはAEDを、あなたは救急車を…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に私の直近の目標を聞いてください。

予約した『Scarlet Lips』が手元に届くまで元気に過ごすことです。頑張ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※身バレ防止のためところどころフェイクを入れたり、割愛したりしています。(読む人が読めばバレそうではあるけど…)

※症状には個人差があると思います。私の場合は、という前提で書いています。

※【うつ 症状】【うつ 自己チェック】【適応障害 チェック】等、検索することが増えたら病院行った方がいいな…と私は思いました。自己診断ではどうにもできないんだよ、と泣きながら検索していたあの頃の自分に教えてあげたいです。

 

 

 

 

*1:余談ですが、中の人は鼻でリコーダーを吹く人だということを知った上で蜂須賀を見ています

*2:真剣必殺時の蜂須賀の筋肉かっこいいな…と思ったので…

*3:危ないですよ

*4:告知映像50秒地点の私「ん゛ッ!」